こころのプラネット

間違った生き方や考え方が自分を苦しめていた・・・ 不安障害で苦しんだ当事者が出会ったこころの真実。森田療法を中心に、マインドフルネス・仏教心理学などを通して 苦しみの本質に気づき、とらわれのないこころのあり方さぐります。

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悩みをわかちあう~自助グループ~

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悩みが孤立感を深める

誰に相談するか

人生の途上にはさまざまな問題が起こります。その都度、私たちは悩み、葛藤し、この困った事態をどうしたら解決できるのかいろいろ模索します。しかし、簡単には答えが出そうもないことも少なくありません。

自分一人では背負いきれない悩みを抱えた時、あなたは誰に相談しますか。
ふつう、まずは身近な家族、先生、友人などが頭に浮かぶでしょう。しかし、身近な人と言っても、悩みを打ち明けるほど良い関係が保たれているかどうかにもよりますし、逆に身近な人には弱みを見せたくない、相談しにくいという一面もあります。

孤立感を深める

悩みといっても、病気やトラブルなど悩みの対象が具体的である場合には、まずはその道の専門家(医者や弁護士など)に相談することで解決することもあるでしょう。しかし、往々にして私たちはその悩みにとらわれてしまい、悩みをさらに深めることになります。そんな時、私たちはネガティブな感情のうちに閉じ込められてしまい、周りが見えなくなってしまいます。

「この苦しさは他人には分かってもらえない」「こんなことで悩んでいるのは自分だけだ」「相談したところで相手が困惑するだけ」「励ましの言葉も苦痛でしかない」。
このように、悩みの渦中にある人は何よりも孤立感を深めています。そして、それによってさらに悩みを深めているのです。何よりも、その孤立感を解きほぐし、親身に悩みを聞いてもらえる「居場所」が求められています。

自助グループという選択

彩な自助グループ

そんな時、考えられる選択肢の一つが自助グループ(セルフヘルプ・グループ)です。自助グループとは、何らかの困難や問題、障害など同じような悩みを抱えた人同士が集まり、お互いに悩みや気持ち、経験、情報を分かち合い、支え合う中から問題の解決を見出すための活動です。時には専門家を招いて話を聞くこともありますが、基本的には当事者による当事者のための集りというのがその基本です。

病気(がん・難病etc)、障害(身体・発達etc)、依存(アルコール・薬物etc)、家族問題(いじめ・虐待etc)、犯罪被害、マイノリティなど実にさまざまな分野の自助グループが存在し活動しています。

私も現在不安障害の自助グループに参加しています。このグループは、パニック障害、強迫性障害、対人恐怖など、不安を中心とした心の問題を抱えた人たちの集まりで、悩みを話し合うとともに、その治療法である森田療法の思想を共に学んでいます。

自助グループの役割

安全で安心な居場所の提供

自助グループにおける援助機能のうち、どこのグループにも共通し、なおかつ大切な役割の一つは、さまざまな問題や障害で苦しんでいる人たちに、安全で安心な「居場所」を提供することです。 悩みをきちんと聞いてくれる。他人の痛みは自分の痛みと共感してくれる。自分を一人の人間として受け入れてくれる。それはおかしいことではないと認めてくれる。そんな空間を提供してくれる場と言っていいでしょう。つまり、悩みを持つ人たちを孤独感から解放し、安心感で満たし、居場所と役割を提供してくれるということです。

自助グループを調査研究

ところで、私は自助グループに入ったことがきっかけで、大学院に社会人入学し心理学を学びました。その修士論文で取り上げた対象が自助グループでした。現在私が活動している不安障害者のグループです。テーマは「自助グループに参加して自己受容はどう変化したか」についてです。自助グループに入ってメンバーの心にどんな変化があり、自分をどう受け入れることができるようになったかを探ろうというものです。

自己受容度が増大

研究の詳細は省きますが、メンバー108人に対して行ったアンケート調査の結果では、自己受容度が平均38.6%向上していることが分かりました。自己受容度が100%増えた人も1割ほどいます。そのうち8割以上がその理由に「自助グループ活動の成果」と回答しています。また、その際行ったインタビューでは「自助グループがあることですごく救われた」「自分の居場所を見つけられた」「こんな自分でもいいんだと思えた」「受け止めてもらえたという感じは100%あった」などの言葉で、多くの人が「受け容れられた」喜びを率直に表現しています。

こうしたインタビューやアンケート結果からも分かるように、自助グループは「他者からの受容」に包まれた環境であり、自己受容の向上にも影響を及ぼしていることが分かります。

自助グループは支え合い

自己受容の前提は他者からの受容

つまり、自助グループの受容的な空間が参加者に安心感や自己効力感を高めてくれ、ありのままの自分でいいんだという「自己受容」の増大にも大きな力を発揮しているように思えます。私たちが自分自身を受け容れるためには、その前提として他者によって受け容れられているという経験が何よりも重要だということです。

私たちにとって「他者からの受容」の最初の経験は、母親(あるいは養育者)から与えられるものです。人が自己を受容できるためには、その前提として母親(養育者)、家族、又は他者によって受容されるという経験が重要であるということです。そして、一般に自己受容の高い人は他者を受容する傾向も高く、同時に他者からも受容されていると感じる傾向が強いと言われています。

「自分は他者から大切にされている」という思いは、幸福感、安心感、自己効力感などさまざまな心理的問題に関係しているとされています。

支え合いの機能

つまり自助グループでは、自分が「他者から支えられる」とともに、その支えられている自分が「自分を支える」、そして、そんな自分がさらに「他者を支える」という自助と互助という関係の中で成り立っているのです。つまり、自助グループとは「支え合い」という機能が働いているグループと言えます。

親密で人間的な空間

社会学者A.ガートナーとF.リースマン(1977)は、自助グループのようなヒューマン・サービス(人間に働きかける活動)は、必ずしも系統的な知識を持たず、訓練を受けていない人たちによって行うことが出来るとしています。むしろ、彼らの活動は、人間性、人に対する親密さ、配慮、日常的な経験と常識、自発性、時間の積み重ねなどに基づいて行われていると述べています。

つまり自助グループは、専門家や治療者による問題解決・治療空間とは異なる空間であるということです。そこでは、上に述べたような系統的な知識ではないものの、“より親密で、人間的” な能力や技術によるものであるということです。

体験的知識の共有

その一つと言ってもいいのが「体験的知識の共有」ということです。体験的知識というのは、その問題の専門家ではないメンバーが自らの苦しい体験を経てつかんだ知識のことです。専門家ではないのでいろいろな失敗や間違って理解してしまうこともあるかもしれません。しかし、失敗からも学べることが多くあり、それはそれでとても貴重な知識です。つまり、そうした知識がグループ内で蓄積され体系化されたものと言えます。

自助グループの研究者ボークマンは、それを「体験的知識」と呼び、医者など専門職のそれと比べても、より実際的で生きた知識であると高く評価をしています。

わかちあい・ひとりだち・ときはなち

わかちあい

同じ自助グループの研究者である岡知史(1999)は自助グループの働きを、「わかちあい」「ひとりだち」「ときはなち」と分かりやすい言葉で説明しています。「わかちあい」は先に述べたように、悩みや気持ち、経験、情報を分かち合うことです。

ひとりだち

「ひとりだち」は、自分自身の問題を自分自身で引き受け・解決し、社会に参加していくことです。自助グループでは、医療のように誰かが悩みを治療してくれたり、解決してくれるわけではありません。理解し共感してくれる仲間ではあっても、あくまでも悩みや問題を解決するのは自分自身です。

その上で、自助グループでは、世話役になって集まりの幹事役をしたり、司会をしたり、対外的な交渉を任されることもあります。そのことによって、自分の問題を対処できるようになったり、自分をコントロールできるようになり、自尊心や自己効力感などを高めます。つまり、お互いが支え合う中で、自然と「ひとりだち」の力が育まれていくのです。

ときはなち

そして、「ときはなち」は、こうした自助グループでの活動によって、これまで自分自身が縛られていた既成概念、抑圧的なこころを解放し、いまある自分を受け容れることが出来るようになることを意味しています。

自助グループの存在基盤は何か

感覚を共有する

ところで、こうした自助グループの親密で人間的な関係はどこから来るのでしょうか。それが可能であるのは、共通の悩みを経験した人たちの集まりであるからです。同じような悩みを経験した人たちは、その経験を通して感じた、不安、苦しさ、生きづらさ・感覚・感情・人間関係・ジレンマ・葛藤・思いなど、経験者誰もが感じる「感覚」を共有しています。

先に紹介したインタビューの中でも、メンバーは「自助グループでは、同じような症状で苦しんだ人しか分からない気持ちを分かってくれる。そこで話される言葉を聞くと、心の底から安心感があり、ほっとする」と述べています。いわば、同じ悩みを体験した者どうしの「分かる分かる」という肌で感じられる共通の感覚です。

「記憶」と「言葉」

中村雄二郎(1992)は『臨床の知とは何か』の中で、近代合理主義の理性とは違った理性のあり方のひとつとして「共通感覚」という概念を提供しています。それは「記憶」と「言葉」を通して感じられるものだと言います。

この場合、「記憶」とは単なるデータではない具体的なイメージ性をもった記憶、そして、「言葉」とは血の通わない観念的な言葉ではなく、生活や生命に触れあうような深い思いのこもった言葉ということです。

共通感覚こそ自助グループの存在基盤

自助グループの集まりでは、メンバー同士がこうした共通の感覚を通してつながる、とでも言えるコミュニケーションが行われています。それが、受け容れられた、分かってもらえたという感覚につながるのです。

自助グループにはさまざまな援助機能がありますが、この「共通感覚」こそ、専門的知識による「共感と理解」とは一線を画した、自助グループの存在基盤であると思われます。

ポジティブな考え方が育まれる

もちろん、自助グループもいいことばかりではないかも知れません。中には考え方が違ったり、相性の合わない人がいる場合もあります。しかし、私がインタビューした人たちは、そうした人に対しても「反面教師」と前向きに受け取っている人が多かったのがとても印象に残りました。グループ活動の中で自己受容が育まれ、ポジティブな考え方が自然に出来るようになったのかもしれません。

いずれにしろ、専門家による支援や公的支援はあっても、心理的なサポートまではなかなか手が行き届かないのが現状です。その意味で自助グループの役割は今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。

「臨床の知とは何か」(中村雄二郎・岩波新書)
「セルフヘルプグループ」(岡知史・星和書店)
「セルフヘルプ・グループの理論と実際」(A.ガートナー/               F.リースマン・川島書店)

-こころのトリセツ, こころの悩み, こころの本, 森田療法

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大学卒業後、放送局にて制作・報道などに従事。その後映像会社設立。
思春期より不安障害に悩む。自助グループで活動するかたわら心理学を学び、臨床心理士・公認心理師の資格取得。

名古屋市在住。2015年より長野県安曇野市で300坪の畑を借り都会と田舎の二拠点生活を始める。家族は妻・子ども3人・母。趣味は野菜づくり・読書・世界辺境旅行など。

 

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