《感情には意味がある》
私たちのこころを支配する「感情」。私たちの人生を彩る喜びも悲しみもすべて感情によるものです。
そして、その感情を理解する上で大事なことの1つ目と線先々回「感情はコントロールできるか?」を取り上げました。そして、先回はその感情には「感情の法則」というものがあることを理解しました。
そこで、今回は「感情には意味がある」ということを取り上げてみたいと思います。
負の感情の意味
自然に存在するもので意味のないものはありません。
もちろん感情もそうです。
不安・恐怖・悲しみ・怒り・妬みなどを一般に負の感情と言います。負の感情にも当然必然性があります。
例えば、不安・恐怖は私たちに「何か危険がある」ことを教えてくれ、それを回避するよう教えてくれます。
悲しみは「失くしたものが自分にとっていかに大切なものだったのか」を気づかせ、以後同じ悲哀を味わうことが無いよう教えてくれます。
怒りは権利を侵された時それを訴える感情です。その昔、食べ物を得るために戦う必要がある場合には不可欠な感情だったのかもしれません。
妬みは社会的に生き残るため、独占したい、支配したいという思いです。他人が自分より物心両面にわたってすぐれていることに対する対抗心であり、自分が愛している人が、他人に愛情を向けるのをうらみ憎む心です。いずれも、社会的に生き残るため発達した感情と思われます。
人は意味によって苦しみを乗り越える
人間の生命活動は全て生きるためです。つまり、負の感情にも「生きるため」という意味があるということになります。
人は意味のない苦しみには耐えられません。それに意味を見出すことによってはじめて苦しみを乗り越えることができるのです。また、負の感情があるからこそ喜びや幸せがより生き生きと感じられるのです。
《負の感情とのつき合い方を変える》
これまで、私たちは負の感情を敵対視し、取り除くべきものとして扱ってきました。私もこの症状・不安を異物視し、これさえなければ自分の思うように生きられるのにと何度思ったかしれません。
しかし、負の感情にも意味があるとなれば、そのつき合い方も変わらざるを得ません。
「生きたい」に焦点を当てる
先ほど、負の感情は私たちが生きるために必要なものであると述べました。そこで森田療法では、負の感情を取り除くはからいをやめてそのままにしておく態度を養うことを目指します。
そして、負の感情と表裏一体となっている「生きたい」という方に焦点を当てます。なぜなら、人間の生命活動は「よりよく生きたい」という「生の欲望」の発露に他ならないからです。
行動には「はずみ」がある
人間は生きていくためその時その時にやらなければいけないことがあります。お腹が空いたら食べ物を手に入れなければいけません。健康になりたいと思えば運動もしなければなりません。
自然反応である感情はコントロールできませんが、自分の意思による行動はコントロールが可能です。
目の前のやれることからやってみる。やれば小さな達成感があり、今度はもっと工夫したくなります。行動にはそうした弾みがあります。
行動の積み重ねが成果を生み、一方で負の感情ばかりに当たっていた焦点が行動に移っていきます。こうしたことによって、「とらわれ」から離れていくことができると教えています。