こころのプラネット

間違った生き方や考え方が自分を苦しめていた・・・ 不安障害で苦しんだ当事者が出会ったこころの真実。森田療法を中心に、マインドフルネス・仏教心理学などを通して 苦しみの本質に気づき、とらわれのないこころのあり方さぐります。

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私にとっての自助グループ

投稿日:2020年5月16日 更新日:

自助グループの独自性とは何か

自助グループとは、先に「何らかの困難や問題、障害など同じような悩みを抱えた人同士が集まり、お互いに悩みや気持ち、経験、情報を分かち合い、支え合う中から問題の解決を見出すための活動である」と定義しました。

「悩んでいるのは自分ひとりだけではない」ということが文字通り体感でき、他人の痛みは自分の痛みと共感してくれる場、それが自助グループです。

感覚を共有する

ところで、こうした自助グループの親密で人間的な関係はどこから来るのでしょうか。それが可能であるのは、共通の悩みを経験した人たちの集まりであるからです。同じような悩みを経験した人たちは、その経験を通して感じた、不安、苦しさ、生きづらさ・感覚・感情・人間関係・ジレンマ・葛藤・思いなど、経験者誰もが感じる「感覚」を共有しています。

先に紹介した、私の属する自助グループを調査研究した際のインタビューの中でも、メンバーは「自助グループでは、同じような症状で苦しんだ人しか分からない気持ちを分かってくれる。そこで話される言葉を聞くと、心の底から安心感があり、ほっとする」と述べています。いわば、同じ悩みを体験した者どうしの「分かる分かる」という肌で感じられる共通の感覚です。

記憶と言葉

中村雄二郎(1992)は『臨床の知とは何か』の中で、近代合理主義の理性とは違った理性のあり方のひとつとして「共通感覚」という概念を提供しています。それは「記憶」と「言葉」を通して感じられるものだと言います。

この場合、「記憶」とは単なるデータではない具体的なイメージ性をもった記憶、そして、「言葉」とは血の通わない観念的な言葉ではなく、生活や生命に触れあうような深い思いのこもった言葉ということです。

共通感覚こそ自助グループの存在基盤

自助グループの集まりでは、メンバー同士がこうした共通の感覚を通してつながる、とでも言えるコミュニケーションが行われています。それが、受け容れられた、分かってもらえたという感覚につながるのです。

自助グループにはさまざまな援助機能がありますが、この「共通感覚」こそ、専門的知識(医者やカウンセラーなど)による「共感と理解」とは一線を画した、自助グループの存在基盤であると思われます。

自助グループの機能

それでは、その自助グループが果たす機能・成果とは何でしょうか。
私が活動している森田療法の自助グループ「生活の発見会」を例に見ていきましょう。

1)心理的な支え

その第一の機能・成果は、仲間による受容と共感がメンバーの「心理的な支え」に大きく貢献しているということです。

2)思想的な支え

そして、「生活の発見会」の場合には、そこにもう一つの機能が付け加わります。

それは、森田療法を共に学び合うことによって得られる支援です。

それはとらわれから解放し、よりよく「生きていくための力を育む」ことに貢献するものです。

例えば、メンバーの多くは不安を中心とした悩みを抱えています。

その不安を克服するためにはどうしたらいいのかを森田療法の思想を学びながら活動しています。具体的には、「あるがまま」の心のあり方など自然な生き方を学びます。それによって、よりよく生きるための洞察力が育まれます。

そしてこの二つの機能が複合的に作用し、相乗効果をあげているのです。

森田療法はセルフヘルプ的

それでは、なぜ自助グループで森田療法が大きな成果をあげているのでしょうか。

それは森田療法がきわめてセルプヘルプ的な治療法であるからです。
このことは、森田療法による自助グループが50年以上にも及ぶ歴史をもって今も続いてることが証明しています。

森田療法研究所長の北西憲二氏は『森田療法の根底には、クライエント自身がもつ自然治癒力や自助的努力の促しがある。ここに森田療法がセルフヘルプ的であるという意味がある』とし、例えば、『不安障害の原因である「とらわれ」は単に病理ばかりを含むのではなくその背後に人の生き方を含むものであり、自助グループはその森田療法の示す人の生き方の学習を通して、人間としての成熟や成長を目ざしている』と述べています。

生きる力を育む

自助グループの役割

本来、自助グループは悩める人の居場所であり、いわゆる医療専門家による治療空間とは異なります。

しかし、多くの人が症状の改善や問題の解決を期待して参加することが多いのも事実です。私もそうでしたので、心情的には理解できますが、自助グループにその役割や価値を期待するのは無理があると思います。

生きる力を育む

むしろ症状や問題を抱えながらも、孤立感や無力感からの脱出、これまでの生き方の反省、人間に対する誤った考え方の修正、自然な生き方など、これまで目を向けることがなかった大事な問題を、グループ活動を通して気づくことこそ自助グループの大きな役割ではないか。

それは、治療的な意味で症状の改善や問題の解決ではないかもしれませんが、問題を抱えながらもよりよく生きていくということが人生の現実であり真実であることを考えると、自助グループそのひとりだちの力を育んでいることになります。

自助グループの意義

いずれにしろ、何らかの困難や問題、障害などを抱えた人にとって、専門家による支援や公的支援はあったとしても、心理的なサポートまではなかなか手が行き届かないのが現状です。

その意味で自助グループの役割は今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。

【参考】
「臨床の知とは何か」(中村雄二郎・岩波新書)

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プロフィール

石井 勝
大学卒業後、放送局にて制作・報道などに
従事。その後独立。
思春期より不安障害に悩む。自助グループ
で活動するかたわら心理学を学び
臨床心理士・公認心理師の資格取得。
名古屋市在住。2015年より北アルプスの麓
長野県安曇野市で300坪の畑を借り
都会と田舎の二拠点生活を始める。
家族は妻・子ども3人・母。
趣味は野菜づくり・読書・世界辺境旅行等

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