こころのプラネット

間違った生き方や考え方が自分を苦しめていた・・・ 不安障害で苦しんだ当事者が出会ったこころの真実。森田療法を中心に、マインドフルネス・仏教心理学などを通して 苦しみの本質に気づき、とらわれのないこころのあり方さぐります。

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感情はコントロールできるのか?

投稿日:2019年11月5日 更新日:

 

《感情を正しく理解する

森田療法は人間の感情に焦点をあてた治療法です。森田は、不安障害を引き起こす原因を、感情に対する誤った理解と対処により生じるものと考えました。そのために、感情に対する正しい理解が不可欠であり、それによって正しい対処法・つき合い方が可能になると主張しました。

感情に善悪はない

感情にはポジティブ(正)な感情とネガティブ(負)な感情があります。しかし、善い感情・悪い感情というものはありません。人の幸せを妬(ねた)んだとしても、非常識な人に怒りを覚えたとしても、その時点ではその人はそう感じるというだけです。

もちろん、その感情に駆られて相手に嫌がらせをしたり、怒って手を上げたりすれば、これは「感情」が起きた結果なされた「行動」ですので悪いということになります。

しかし、感情そのものはその時のその人のこころの状態を表している「事実」であり、善悪はないのです。

負の感情は連鎖する

不安・恐怖・悲しみ・怒り・妬みなどを一般に負の感情と言います。私たちは感情が自然反応であることが分かっていても、どうしても負の感情に苦しみます。

私たちが負の感情に反応しやすいのは、先にも言いましたが、危険を回避する生きものの生存本能から来ているので、仕方のないことかもしれません。

負の感情で「事実」が見えない

私も感情の負の連鎖に苦しめられました。不安障害のために、自分が思うように生きられないという無念の気持ちが常にあるため、さまざまな負の感情を呼び起こすのです。不安・恐怖はもちろん、不満、劣等感、怒り、煩悶、妬(ねた)み、恥、絶望、虚しさ、悲しみなど、さまざまな負の感情が折にふれて湧き上がってくるのです。

悩みの渦中には自分の心は完全に「主観」の中に閉じ込められています。そうなると本当はどうなのかという「事実」が見えなくなってくるのです。そのため、負の感情のるつぼからなかなか抜け出せない悪循環にはまってしまうのです。

感情はコントロールできるのか?

私たちが感情を理解する上で大事なことの1つ目は「感情はコントロールできるのか?」ということ、そして、2つ目は「感情には意味がある」ということです。
まず、今回は「感情はコントロール」について考えてみましょう。

感情は「内なる自然」

森田療法は「もともと私たちの身体と精神の活動は自然の現象である。人為によってこれを左右することはできない」という考え方にその基本があります。それは、人間も自然の一部としてとらえる東洋思想に由来するものです。

森田はその不安障害の根底にある不安や恐怖というものは、誰もが持つ自然な感情であり「内なる自然」であるとして、「あるがまま」に受け容れるこころの姿勢を説きました。

感情はコントロール出来ない

自然界にはその現象や秩序を支配している法則があります。冬には葉を落とし、春になれば過たず緑の芽を吹く木々の生命の営み一つとっても、そこには精妙な自然の秩序が存在しています。

言うまでもありませんが、人間がその法則を無視して自然をコントロールすることはできるはずがありません。

例えば、人が苦手な場面で恐怖の感情にかられると、心臓がドキドキするなど体での反応が否応なく起こってしまうのです。

感情と自律神経の密接な関係

それを証明するのが “感情は自律神経と密接な関係にある” という事実です。

自律神経は内臓、血管などの働きをコントロールしている神経で、私たちの意思で自由に動かす事は出来ません。

例えば、苦手な場面では、自律神経のうち交感神経の働きが活発になり、自分の意思と関係なく心臓がドキドキし、横隔膜がせり上がり、丹田に力がなくなり、呼吸は浅くなり、頭に血が上り、手足の力が抜け、口はかわき、舌はひきつれ、体は震えてきます。それをコントロールすることは出来ません。

ですから、その自律神経と深い関係にある感情も人間の思う通りにコントロール出来ないということになります。これによっても、感情が自然な働きであるということが分かります。

感情の大きな落とし穴

つまり、その自律神経と深い関係にある感情も人間の思う通りにコントロール出来ないということになります。
これによっても、感情が自然な働きであるということが分かります。

試しに自分でびっくりしようとしてみると分かります。びっくりするフリは出来ても本当にびっくりは出来ません。しかし、突然背後で大音響がすれば否応なくびっくりします。びっくりするにはそうした状況が必要であり、人間は自ら感情をひき起こしたり、コントロールしたりできないということです。

私たちが一番誤解しやすいのはこの点です。しかし、私たちはついついそれをやろうとしがちです。そこに感情の大きな落とし穴があるのです。

「アンガーマネージメント」は感情のコントロールではない

最近「アンガーマネージメント」ということばをよく聞きます。この言葉は一見感情をコントロールする方法に聞こえるかもしれません。

「感情とは何か」(ちくま新書)で清水真木氏は、「例えば、“部下のミスに腹を立て怒鳴りつける”ことを思いとどまらせるようにすることを『アンガーマネージメント』というのならそれは感情のコントロールではなく、感情(怒り)と行動(怒鳴りつける)を遮断する操作にすぎません。私たちに『アンガーマネージメント』つまり怒りのコントロールが本当に可能であるならば、怒りの代わりに『憐み』や『悦び』などを覚えるようにさせるありえべからざる技術でなければならないはずである」とし、感情は外部からのコントロールを一切受けつけないものであると指摘しています。

感情の法則

感情が自然反応というからには、その感情にも「自然の法則」が働いているに違いありません。そのことに気がつき、「感情の法則」というものを導き出したのが森田療法の創始者森田正馬です。

法則1:感情はそのまま放任すればやがて消失する

その法則の一つは、「感情はそのまま放任すれば、山形の曲線をなしひと昇りしてついには消失する」というものです。

つまり、不安・嫉妬・怒りといった負の感情であっても、それを無くそうとしたり抑えようとしたり “やりくり”(コントロール)しないでそのままにしておけば、時間とともに静まり消えていくということです。

これは私たちも日常経験することです。例えば、心配ごとで頭がいっぱいの時、たまたまやらなければいけない用事があってそれに没頭していたら、先ほどの心配が消えていた、という例です。

これは、心配という感情を「そのままにしておく」という点がきわめて重要です。とりあえず心配事はそのままにして、やらなければいけない用事の方に気持ちを向けるということです。ただ、心配が消えることを “期待”してやってはうまくいきません。それは心配という感情が頭の中から消えていない証拠だからです。

法則2:感情は注意を集中すると強くなる

もう一つは、「感情はその刺激が継続して起こる時と、注意を集中する時に強くなる」というものです。つまり、感情を抑え込んだり、コントロールしようとすると逆に増大してしまうということです。これは私たちの日常でよく経験します。

感情の「精神交互作用」

そのメカニズムは、不安な感情をコントロールしようとすると、そこに注意が集中し感覚がより鋭敏になり、ますます負の感情が増大していくということです。

いわゆる悪循環ということで、森田療法では「精神交互作用」と言っています。感情をコントロールしようとすることは、「自然の法則」に反している行為ということになります。

私も森田を学び始めてけっこう長い間、不安や恐怖を無くすことばかりに頭がいって、感情を「そのままにしておく」ということがよく分かりませんでした。どうしても、「不安や恐怖が静まり消えてゆく」という結果を期待してしまい、自分の感情の行方ばかりに注意がいってしまうのです。

そもそも「感情は自然な現象でコントロールできないものである」という前提が、頭だけでなく肚に落ちない限り、この感情の法則は正しく理解されないのです。

ですから、この「感情の法則」は結果論であり、これをめざして感情をコントロールしようとするのは間違いなのだということが分かってきたのです。

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大学卒業後、放送局にて制作・報道などに従事。その後映像会社設立。
思春期より不安障害に悩む。自助グループで活動するかたわら心理学を学び、臨床心理士・公認心理師の資格取得。

名古屋市在住。2015年より長野県安曇野市で300坪の畑を借り都会と田舎の二拠点生活を始める。家族は妻・子ども3人・母。趣味は野菜づくり・読書・世界辺境旅行など。

 

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