こころのプラネット

間違った生き方や考え方が自分を苦しめていた・・・ 不安障害で苦しんだ当事者が出会ったこころの真実。森田療法を中心に、マインドフルネス・仏教心理学などを通して 苦しみの本質に気づき、とらわれのないこころのあり方さぐります。

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さ迷えるこころ~マインドワンダリング~

投稿日:2021年2月4日 更新日:

 

ふと浮かぶ記憶・思い

思い出そう・考えようとしていないのに心に浮かぶ

何かを「思い出そう」とか「考えよう」としていないにもかかわらず、とりとめのない記憶や思い(思考)がふと頭に浮かんできて、しばし目の前のことを忘れてこころの内なる世界にさ迷っていた経験はありませんか。

人の話を聞きながらぼんやりと別のことを考えていたり、本を読んでいても心はそれとは別の空想にふけっていたり、旅先でふと見かけた風景に子どもの頃の思い出が一気によみがえったり、仕事をしながら脈絡のない記憶や思考の世界に迷い込んだり・・・。

私たちは日常このような、「思い出そう」としていないのにふと過去の記憶を思い出したり、「考えよう」としていないのにふと思考が浮かんできたり、といったことをしばしば経験しています。

さ迷えるこころ「マインドワンダリング」

こうした「さ迷えるこころ」の状態、「こころここにあらず」の状態、「雑念が次々と湧いてくる」状態、これを「マインドワンダリング」と呼びます。
私たちが「ぼんやりしていた」という状態の時は、このマインドワンダリングの状態といってもいいでしょう。

注意が離れ内的世界へ

ふつう何か活動をしている時(例えば料理をしている時)、こころは料理の手順や味つけの方法など、つまり「いま、その瞬間」に注意が向いているはずです。

しかし、人間のこころはしばしばそこから離れて、自分の内的世界(意図しない記憶や思考)へ向かってしまいます。そのため、目の前の状況が意識に上りにくくなり、ますます内的世界へ没入してしまうということが起きるのです。

脳波を使った研究でも、マインドワンダリング中は外からの刺激に対する脳の反応が弱くなることも明らかになっています。

こうしたマインドワンダリングが起こりやすいのは、馴れた仕事、関心が持てない活動、不安を感じている時などに多く、初めての仕事、集中力が必要な活動、積極的な関心を持っている時は少ない傾向にあると言われています。

そもそも、私たちの脳は注意を長い時間持続することが困難であり、時々注意が散漫になるようにできているとも言われています。これもホメオタシス(生体保持)の一種と考えられます。

多くの時間を費やす

私たちは1日の多くの時間をこのマインドワンダリングに費やしています。
ある調査によると30~50%というデータもあります。

私たちはふだん、自らが意識的に思い出し、意識的に考えていると思いがちですが、実はびっくりするほど多くの時間を、「こころここにあらず」の状態で、ぼんやりよそごとを考えて過ごしていると言えます。

なぜマインドワンダリングが起きるのか

しかし、この時間がまったくムダで意味がないのかというと決してそうではありません。
人がこれだけ多くの時間をマインドワンダリングに費やしていることを考えると、ここに何らかの重要な意味があると考えられます。

そのため、最近はこの現象の中に、これまで見過ごされてきたこころのさまざまな意味が含まれていると考え、活発な研究が行われるようになってきています。

ネガティブとポジティブの2つの側面

マインドワンダリングにはネガティブとポジティブの2つの側面があります。

ネガティブの側面では、課題に対して集中が持続しないため効率が悪くなります。また、ふと浮かんでくる記憶や思考がネガティブなことが優勢になると、不安障害や抑うつなどに関係してきます。(このことについては、次回の「ふと浮かんでくるネガティブな思い」で考えてみたいと思います)。

ポジティブな面では、例えば、思い出そう・考えようとしなくても、過去や未来に関する情報が意識に上ることで、私たちは目の前の状況だけに縛られないで情報を得ることが出来ます。
それはより適切な行動をとれるようになるための適応行動とも考えられます。この働きは洞察やひらめき、気づき、マインドフルネスなどにも関係するといわれています。

デフォルト・モード・ネットワーク

ぼんやりしている時に活性化

最近、「デフォルト・モード・ネットワーク」という言葉が盛んに言われるようになりました。

最新の脳科学の研究によると、人間の脳は、勉強や仕事など意識的に何かに取り組んでいる時に比べて、むしろぼんやりしている時(アイドリング状態)の方が、脳の広い領域にわたって、より活性化している状態であることが分かってきています。

これが「デフォルト・モード・ネットワーク」という脳のネットワークの働きによるものです。この状態の脳は、意識的な活動している時に比較して20倍ほど活発であると言われています。

新しいネットワークの結びつき

ふだん私たちが仕事や勉強のような自ら意識的に活動をしているような場面では、脳を効率的に使うため、脳の限られた領域のみが活発に活動し、それ以外の領域は休んでいると言われています。ですから、神経ネットワークの新しい結びつきは起きにくいと考えられます。

しかし、ぼんやりしている時、つまり「デフォルト・モード・ネットワーク」の状態では、ネットワークの結びつきの変更が活発に行われます。
ふだんはつながることのない領域も活性化して、新しいつながりや組み合わせが出来やすくなっています。

記憶の断片をつなぐ

例えば、あちこちに散らばる記憶の断片も思いもよらないつながりによって、新しいものの見方・考え方が生まれやすくなります。
つまり、「気づき」「ひらめき」「洞察」が得られる可能性が高くなるというわけです。

マインドフルネス

評価や判断を加えない

そのことと関連して、最近こころの分野で大きな関心を集めているのが「マインドフルネス」です。

ものごとをあるがままに観察する仏教の洞察瞑想法の影響を受け、1960年代以降のアメリカで広まったものです。心理療法だけでなく、心身の健康や良好な人間関係、創造力や集中力を増す効果があるとして注目を集めています。

マインドフルネスは、瞑想という非日常の空間を使って「今ここでの経験に,評価や判断を加えることなく注意を向けること」と説明しています。

ぼんやりと注意を向け

例えば、マインドフルネス瞑想を始めると、まずさまざまな刺激が気になります。例えば次々と湧き出る雑念(内部からの刺激)や周囲の音(外部からの刺激)などです。

それに対して、評価や判断を加えないで注意を向け観察する。

つまり、雑念が起きたら「ああ、自分は今こんなことを考えているんだなあ」とぼんやりと注意を向け、鳥の声が聞こえればその声にぼんやりと注意を向ける。次々と生まれてくる内や外からの刺激に対してぼんやりと注意を向け観察し、そのまま流していく。

この状態が脳科学的に分析すると、前述の「デフォルト・モード・ネットワーク」が働いている状態だと考えられています。

このように、「マインドフルネス瞑想法」によって、ふだんは解釈・評価・感情で曇っている感性が研ぎ澄まされ、新しい気づきや洞察を手に入れることが出来るようになると言われています。

「デフォルト・モード・ネットワーク」が働く

こう見てくると、先に取り上げたふと浮かぶ記憶や思考である「マインドワンダリング」にも、「デフォルト・モード・ネットワーク」が働いていることが分かります。

思い出そう・考えようとしなくても、過去や未来に関する情報がふと意識に上ることで、私たちは目の前の状況だけに縛られないで情報を得ることが出来る。
つまり、「気づき」が得られるということです。

意識化されない部分が重要

瞑想という言わば非日常の状況で行う「マインドフルネス」と、日常頻繁に生じる「マインドワンダリング」が、「デフォルト・モード・ネットワーク」( “ぼんやり ”という非意識的な状態で起きる現象)を通じて共通しているということはとても興味深く思われます。
氷山の90%は水面下にあると言いますが、人間のこころも意識化されない隠れた部分が大きな影響を与えているのだと改めて感じないでおられません。

【参考文献】
「ふと浮かぶ記憶と思考の心理学」~無意図的な心的活動の基礎と臨床~
関口貴裕・森田泰介・雨宮有里著(北大路書房)
「マインドフルネスストレス低減法」ジョン・カバット・ジン著(北大路書房)

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大学卒業後、放送局にて制作・報道などに従事。その後映像会社設立。
思春期より不安障害に悩む。自助グループで活動するかたわら心理学を学び、臨床心理士・公認心理師の資格取得。

名古屋市在住。2015年より長野県安曇野市で300坪の畑を借り都会と田舎の二拠点生活を始める。家族は妻・子ども3人・母。趣味は野菜づくり・読書・世界辺境旅行など。

 

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